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東京 教育と学区の読本

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東京で子育てする前に知っておく、教育ルートと学区の話

第1部で「みんなはどう選んでいるか」を知り、第2部で「公立小の学区をどう見るか」を整理する。

PINT HOME|2026年9月版

第1部

東京 教育ルートのリアル

東京の子どもはどこへ進み、親は何を決め手にしているのか。何も分からない状態から、全体像をつかむための9章です。

第1部|全体像|01

東京の子どもは、どこへ進むか

東京の子どもの進み方は、全国とまるで違います。いちばん多いルートでも全体の4割弱。どのルートも「多数派」ではありません。

東京の学校に通う子ども100人を、小学校から高校まで追いかけると、次のようになります。

100人のうち、公立・私立・国立に通う人数
小学校95
中学校7425
高校(全日制)3960
公立(高校は都立)私立国立

東京都の学校基本調査(学校所在地ベース、2024〜2025年度)から概算。都外から通う子を含みます。

中学までは公立が主流で、高校で私立が多数になる。これが東京の形です。全国では高校の7割が公立ですから、東京だけが逆転しています。

ルートごとに人数を数え直すと、こうなります。

100人が進むルート(概算)
公立小 → 公立中 → 都立高約36人
公立小 → 公立中 → 私立高約24人
公立小 → 中学受験 → 私立・国立の中高一貫約20〜24人
通信制・定時制・都外の高校など約11人
私立・国立の小学校 → 私立の中高約4〜5人
公立小 → 都立・区立の中高一貫約1〜2人
周りを見ても、答えは出ませんいちばん多いルートでも3人に1人。「みんなこうしている」という多数派は、東京にはありません。だからこそ、うちの家族はどれを選ぶのか、を先に考える価値があります。

→ 資料I「ルート別の比較表」

第1部|全体像|02

中学受験は「する・しない」より、住む区で決まっている

中学受験をする割合は、都全体で5人に1人。23区では4人に1人。都心の区では2人に1人。住む区で4倍以上の差があります。

中学受験は、家庭の方針で決めるものだと思われています。ところが数字を見ると、決めているのは「周り」です。

私立・国立の中学へ進む割合は、高い区で5割、低い区で1割。同じ区の中でも、受験率が5割を超える小学校と1割の小学校が隣り合っています。

公立小の卒業生のうち、私立・国立の中学へ進んだ割合(2025年3月)
文京区50.1%
千代田区44.7%
港区42.8%
目黒区42.4%
中央区40.4%
23区 合計25.6%
東京都 全体20.3%
葛飾区12.0%
足立区11.8%
江戸川区10.6%

東京都教育委員会「令和7年度 公立学校統計調査報告書」。高い低いは優劣ではなく「周りがどれくらい受験するか」の目安です。全区は資料Aに。

受験率の高い地域では、受験しない側が少数派になります。「塾に行かない子は、放課後に遊ぶ相手がいない」という声はここから出ています。逆に受験率の低い地域で受験を目指すと、情報も仲間も少なくなります。

受験する人数は2024年をピークに横ばい。ただし子どもの数が減っているので、受験率は高いままです。2027年入学は子どもの数が一時的に増え、競争がやや強まる見込みです。

「うちは受験しない」と決めていても、受験率の高い区に住めば、その空気の中で小学校生活を送ることになります。逆も同じです。

→ 資料A「区別の私立・国立中学進学率」

第1部|全体像|03

いちばん多い分かれ道は、高校受験

東京で最も多くの家庭が立つ分かれ道は、中学受験ではなく高校受験です。公立中に進んだ子のうち、都立高へ行くのは半分。3人に1人は私立高へ進みます。

公立中を卒業した100人の行き先(2026年3月、速報)
都立の全日制高校49人
都内の私立の全日制高校33人
通信制高校7人
都外の高校5人
定時制高校3人
その他(専修学校・就職など)3人

東京都教育委員会「公立中学校等卒業者の進路状況調査」(令和8年3月卒、速報)。

2026年度から、国の高校授業料の支援に所得制限がなくなりました。東京都はさらに上乗せをしていて、私立高の授業料は年50万円まで実質かからなくなっています。

その結果、都立高を第一志望にする中学生の割合は年々下がり、過去最低を更新しています。都立高の3分の1以上で定員割れが起きています。ただし、進学指導に力を入れる都立高の倍率は下がっておらず、「上は堅い、真ん中が薄い」という形になっています。

一方で、高校からは入れない私立が増えています。都内の私立高の2割は高校からの募集をしておらず、中学から入るしかありません。「高校から考えればいい」と思っていた学校が、実は中学入試だけ、ということが起こります。

通信制という選択公立中を卒業した子の7%が通信制高校へ進みます。10年前の2倍近くで、通信制からの大学進学率も上がっています。
都立・区立の中高一貫校受検倍率は2018年の5.7倍から3.6倍まで下がりました。ただし全校が同じ日に試験をするので1校しか受けられず、専用の対策塾に通う家庭が大半です。

→ 資料I「ルート別の比較表」

第1部|全体像|04

費用は「どこから私立にするか」で3倍違う

幼稚園から高校までの15年間の費用は、すべて公立なら約610万円、すべて私立なら約1,970万円。差を生むのは「どの段階から私立にするか」です。

幼稚園から高校までの15年間にかかる費用(目安)
すべて公立614万円
幼稚園だけ私立665万円
幼稚園と高校が私立838万円
幼稚園・中学・高校が私立(中学受験ルート)約1,143万円
すべて私立1,969万円

文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」。学校の費用に加えて、給食費・塾代・習い事を含む金額です。

中学受験をするなら、塾代が別にかかります。小学3年生の2月からの3年間で230〜290万円が目安で、6年生の1年だけで120〜140万円です。

私立の中高一貫校の6年間は、学費だけで約510万円。東京都の助成(私立中は年12万円、私立高は年50万円まで)を引くと、実質は300万円台になります。

公立中でも、塾代はかかります見落とされやすいのは、「公立中→高校受験」でも塾代がかかることです。公立中3年生の塾代は年45万円が平均で、私立中の同学年より多くなっています。高校受験の塾は3年間で100万円前後が目安です。

→ 資料J「教育費の一覧」

第1部|全体像|05

何歳で、何を決めることになるか

決断の時期は、思っているより早く来ます。私立小なら年長の11月、中学受験なら小学3年生の2月。「まだ先」と思っているうちに、選択肢は静かに減っていきます。

  1. 年少〜年中私立小・国立小を目指すなら、幼児教室が始まる
  2. 年長の11月私立小の入試。国立小は11〜12月に抽選と考査
  3. 3年生の2月中学受験塾の入室が本格化(新4年生)。4年生の途中からでも入れるが、席が埋まる塾もある
  4. 5年生都立・区立の中高一貫校を目指すなら、対策を始めるころ
  5. 6年生の1〜2月中学入試。都立・区立の一貫校は2月3日の1校だけ
  6. 中1〜中2高校受験の塾へ。中3の2学期の成績が都立入試の内申になる
  7. 中3の1〜2月高校入試。私立推薦 → 都立推薦 → 私立一般 → 都立一般の順

住まいの話に直すと、こうなります。中学受験をするなら、3年生までに塾へ通える場所に住んでいる必要があります。転校をさせたくないなら、小学校入学までに住まいが決まっている必要があります。

教育のルートを決めるのは、子どもが大きくなってからでかまいません。でも「ルートを選べる場所に住んでおくか」は、未就学のうちに決まります。

第1部|選び方|06

親は、何を決め手にしているか

受験する理由の上位は「環境」「6年間をのびのび」「同じ意欲の子と学ばせたい」。しない理由は「地元の公立で十分」「小学生の間はのびのび」。どちらも「のびのび」を望んでいます。

同じ言葉を使いながら、選ぶルートが分かれる。つまりルートの違いは、価値観の違いというより「どの時期をのびのびさせるか」の違いです。

実際の決め手は、子どもより親側の事情だという調査が多くあります。

住んでいる地域の受験率周りが受験するかどうか。決め手として最も大きいものです。
親自身の経験自分が中学受験をした親は、子にもさせる傾向があります。
夫婦の一致片方が費用に渋り、片方が進める家庭は、途中で苦しくなります。
世帯の余裕区ごとの平均年収と受験率は、ほぼ連動しています。

子ども側で専門家が見ているのは、次の3つです。

  • 生まれ月。中学受験の合格者は4〜6月生まれが多く、1〜3月生まれは少ないという調査があります。高校受験では、この差がほぼ消えます。
  • 競争との相性。順位が出る環境で伸びる子と、萎縮する子がいます。
  • 習い事。4〜6年生は習い事の伸び盛りです。受験塾と両立できるのは4年生までが目安とされています。
専門家の言葉「中学受験に向かない子はいない。向かない親がいるだけ」(教育ジャーナリスト おおたとしまさ)。「幸せな受験とは、親子の向いている方向が一致していること」(中学受験カウンセラー 安浪京子)。
第1部|選び方|07

望む未来から、ルートを逆引きする

「どの学校か」より先に、「どんな大人になってほしいか」。そこから逆引きすると、似た願いを持つ家庭が多く選んでいるルートと、その注意点が見えてきます。

正解はありません。似た願いを持つ家庭が実際にどのルートを多く選び、どこでつまずいているかを並べました。

望む未来多い選択注意点
難関大学に行ける学力を3〜4年生で塾 → 私立の中高一貫「選択肢を増やすため」が目的だと、かえって狭まります。偏差値だけで学校を選ばない
海外でも働ける子にインター、英語コースのある学校、高校での留学中学受験では英語がほぼ活きません。英語が得意なら高校受験の方が有利なことも
好きなことを伸ばしたい公立小中で習い事を続け、高校受験受験塾と習い事は、5年生で両立が難しくなります
地元で友達と育ってほしい公立小中 → 都立高受験率が4割を超える区では、「受験しない側」が少数派になります
受験で消耗させたくない高校受験。または都立・区立の一貫校を1校だけ高校受験は制度が多様で、合格への道が複数あります
早生まれ、のんびりした子高校受験15歳になると、生まれ月の差はほぼ消えます
周りに合わせて、とりあえず塾に4年生で入塾 → 5年生で方針を決める目的のない入塾は「こんなはずじゃ」になりやすい。夫婦で目的を先に決める
子ども自身が言い出した/言わない本人の意思を軸にする満足度がいちばん高いのは「子の意思を尊重できた」と答えた家庭です

教育方針を型に分けると、「先取り進学型」「のびのび型」「英語・国際型」「探究型」「地元公立型」「様子見型」の6つになります。多くの家庭は様子見型から始まり、4年生の前後でどれかに寄っていきます。

→ 資料I「ルート別の比較表」

第1部|選び方|08

後悔しているのは、合否ではない

中学受験をした家庭の5〜6割が「後悔がある」と答えています。理由の上位は不合格ではなく、「きつい言葉を言った」「他の子と比べた」「習い事をやめさせた」でした。

5〜6割「後悔がある」と答えた親
7割「やってよかった」と答えた本人
9割超途中でやめた家庭のうち「やめてよかった」
7割合格した後にも悩みがあった家庭

受験を経験した本人に聞くと、7割が「やってよかった」と答えます。後悔しているのは親の方で、その中身は「関わり方」です。

途中でやめた家庭の理由は「子どもがやめたいと言った」が過半数。やめた家庭の9割以上が「やめてよかった」と答えています。撤退は失敗ではありません。

合格した後に悩む家庭も7割にのぼります。友達関係、心の不安定、成績。入学がゴールになると、そこから苦しくなります。

「あなたのため」が出てきたら専門家が警戒する言葉として挙げるのが「あなたのため」「選択肢を増やしてあげたい」です。親の学歴への思いが、子に向かい始めた合図とされています。

調査から読み取れるのは、満足と後悔を分けているのはルートの種類より、進め方だということです。

第1部|住まい|09

住む場所で、選びやすいルートが変わる

教育のルートは学校で決まると思われがちですが、実際は「塾と学校がどこにあるか」で選びやすさが決まります。ここが、住まいと教育がつながるところです。

中学受験の塾難関校向けの大手塾は、城南から都心に校舎が偏っています。校舎が1つもない区もあり、電車で通うことになります。都立・区立一貫校の対策塾は、23区のほぼ全域にあります。
私立小・国立小私立小は西側の5区に集中し、東側・北側の7区には1校もありません。国立小は、住所によって出願できるかどうかが決まります。
都立・区立の中高一貫校所在しない区が5つあります。ただし通学区域はなく、都内に住んでいれば受けられます。
都立高学区がありません。効くのは「沿線」で、進学指導に力を入れる都立高までの通学時間は平均70分という試算があります。
通塾東京では小学6年生の6割、中学3年生の7割が塾に通っています。塾までは「ドアtoドアで30分以内」が目安とされ、塾選びの決め手の1位は「家からの距離」です。
6割塾に通っている小学6年生(東京)
7割塾に通っている中学3年生(東京)

「教育熱心な街」と呼ばれる場所は、3つの型に分かれます。文教地区として知られる「学区型」、世帯年収の高い「都心型」、大手塾が駅前にそろう「塾アクセス型」。塾アクセス型の街は、文教地区とは離れた場所にもあります。

「良い学区」を探すより、「うちのルートに必要なものが、通える距離にあるか」。第2部では、そのうえで公立小の学区をどう考えるかを整理します。

→ 資料K「区別の塾・学校の所在」

第2部

公立小の学区の考え方

「良い学区」に決まった基準はありません。家庭によって答えが分かれる6つの問いと、物件が出たときに確かめる事実を整理します。

第2部|考え方|01

学区が気になる、本当の理由

避けたいのは「良い学区に入れなかった」ことではなく、「何も考えずに決めて、合わなかった」ことです。

「なんとなく学区が気になる」。住まいを探し始めた方の多くが、そうおっしゃいます。よく聞いてみると、良い学区に入りたいというより、知らずに決めて後悔したくない、という気持ちがほとんどです。

学区が本当に動かせなくなるのは、上のお子さんが入学した後です。兄弟が同じ学校に通い始めると、転校させたくないという事情ができて、住まいの選択肢は一気に狭まります。

しかも東京23区のうち12区は、小学校を住所以外の方法で選ぶ制度がありません。選べる区も年々減っています。つまり、住む場所を決めることが、そのまま学校を決めることになります。

23区 小学校を住所以外で選べるか
住所で決まる(12区)
千代田新宿文京台東目黒大田世田谷渋谷中野杉並北練馬
隣の学区の学校を選べる(8区)
港墨田品川豊島荒川板橋足立葛飾
距離の条件付きで選べる(2区)
江東江戸川
特認校を区内全域から申し込める(1区)
中央

2027年4月入学の制度。申込日程と細かな条件は資料Bに。

→ 資料B「23区 小学校の就学制度 早見表」

未就学の今が、いちばん自由ですまだ学区に縛られていない今のうちなら、選択肢を広く見られます。第2部は、そのときに知っておきたい視点と事実をまとめた読み物です。
第2部|考え方|02

「良い学区」の正体

「良い学区」に公的な基準はありません。語られている5つの基準のうち、事実で確かめられるのは3つだけです。

世間で「良い学区」と言われるとき、実際に見られているのは次の5つです。

基準具体的に見られているもの事実で確かめられるか
① 中学受験率・進学の文化私立・国立中への進学率、通塾率、昔からの進学ルート区単位までは東京都が公表。学校単位は公表なし
② 学校の規模と教室の余裕学級数、教室不足や仮設校舎の有無、児童数の増減確かめられる(各区が毎年公表)
③ 家庭層・住環境持ち家率や世帯年収、地価、繁華街の有無学校の中身を示すものではない
④ 通学路の安全大通りの横断、踏切、坂確かめられる(歩けば分かる)
⑤ 制度上の入りやすさ住所で決まるか選べるか、抽選、指定校変更確かめられる(各区の公式ページ)

「あの小学校は良い」という噂の多くは、①と③の印象で語られています。ところが、この2つは確かめようがありません。

学校別の中学受験率東京都も各区も公表していません。ネットの「○○小は受験率9割」は口コミか業者の推定で、根拠が示されていません。
学区ランキング雑誌やWebのランキングは、10年以上前の国勢調査から推計した世帯年収や地価で点数をつけたものが主流です。学力や学校の中身を測ったものではありません。
口コミサイト評価は数件の投稿で決まります。同じ学校でも、投稿した年によって正反対の評価が並びます。

よく名前の挙がる学校に通わせている保護者の多くも、「普通の学校です」と答えています。学校を優劣で選ぶのは、そもそも無理があります。

だから、このガイドは学校を比べません。比べるのは、「うちの家族の条件」と「その学区の事実」が噛み合うかどうかです。

第2部|条件を決める|03

家庭によって答えが分かれる、6つの問い

学区を見るときの論点は、ほぼこの6つに集まります。どの答えが正しいということはなく、答えによって見るべき事実が変わります。

それぞれの問いについて、よくある考え方、条件が合わなかったときに起きること、確かめられる事実を並べました。

問い1 中学受験は、するつもり?

よくある考え方
  • するつもり。塾や受験の情報が身近にある環境がいい。
  • しないつもり。放課後に近所の友達と遊べる環境がいい。
  • まだ決めていない。どちらになっても困らない環境がいい。
条件が合わないと、起きること受験しない家庭が、クラスの半分が塾に通う学区に入ると、4年生から放課後に遊ぶ友達がいなくなります。逆に、受験する家庭が受験の少ない区に入ると、塾が遠く、情報も自分で集めることになります。
確かめられる事実
  • 私立中への進学率は、区によって4倍以上の差があります。いちばん高い区で48.5%、低い区で10.6%、東京都全体で19.9%です。
  • 分かるのは区単位までです。学校ごとの数字は公表されていません。

→ 資料A「区別の私立・国立中学進学率」

問い2 放課後の預け先は、どうする?

よくある考え方
  • 学童に預ける。確実に入れることが大事。
  • 祖父母や親族に頼る。その家の近くの学校に通えると助かる。
  • 在宅勤務や時短で、家で迎える。
条件が合わないと、起きること学区は気に入ったのに学童に入れず、「小1の壁」で働き方を変えることになります。共働きの家庭は、学区より先に学童が詰まります。
確かめられる事実
  • 学童の待機児童がゼロの区が10区ある一方、400人を超える区もあります。
  • 「祖父母の家の近くの学校に通わせたい」を理由に学校を変えられる区と、変えられない区があります。

→ 資料C「預け先を理由に学校を変えられる区」、資料H「区の子育て支援の違い・相談先」

問い3 学校の規模は、どちらが安心?

よくある考え方
  • 大きい学校がいい。友達の幅が広く、クラス替えがある。
  • 小さい学校がいい。先生の目が届き、全員の顔が分かる。
  • 規模にはこだわらない。ただし教室が足りていてほしい。
条件が合わないと、起きること小さい学校を望んでいたのに、入ってみたら児童1,000人を超えていた。校庭が狭い、行事が学年で分かれる、入学したら仮設校舎だった、ということが起きます。
確かめられる事実
  • 同じ23区の中に、児童1,000人を超える学校と、各学年1学級の学校があります。
  • 子育て世帯が集まるエリアほど、大規模化と教室不足が同時に起きています。児童数の推移は区が毎年公表しています。

→ 資料D「学校の規模と教室の状況」

問い4 通学は、何分まで許せる?

よくある考え方
  • 徒歩10分以内。大通りは渡らせたくない。
  • 15分くらいまで。見守りや集団登校があれば安心。
  • 20分かかっても、他の条件が合えばいい。
条件が合わないと、起きること地図では近いのに、幹線道路を渡る、踏切を越える、急な坂がある。低学年の6年間、毎日のことです。
確かめられる事実
  • 通学区域は番地で決まります。同じ町内でも、番地によって通う学校が分かれます。
  • 販売図面の「○○小学校区」という表記は保証ではありません。

→ 第7章「物件が出たら、確認する10項目」

問い5 親の通勤時間は、どこまで許容する?

よくある考え方
  • 通勤は30分以内に収めたい。平日の夕食は一緒に食べたい。
  • 45分まで。朝か夜、どちらかは一緒に過ごしたい。
  • 1時間かかってもいい。在宅勤務の日で調整できる。
  • 通勤が長くなっても、教育環境の条件を優先したい。
条件が合わないと、起きること学区を優先して通勤が延びると、平日に家で過ごす時間が減ります。逆に通勤を優先すると、選べる学区の幅が狭くなります。どちらを取るかは、家庭ごとの判断です。
確かめられる事実
  • 通勤が片道30分延びると、平日に家で過ごす時間は1年で約250時間減ります。
  • 在宅勤務の日数や、送り迎えを誰が担うかで、許容できる通勤時間は変わります。

→ 第4章「条件どうしは、ぶつかる」

問い6 合わなかったとき、どんな逃げ道がほしい?

よくある考え方
  • 同じ学校の中に、教室以外の居場所があること。
  • 学校の外に、通える場所があること。
  • 家で学べる手段と、親が家にいられる働き方。
  • いざとなれば、学校を変えられること。
条件が合わないと、起きること低学年で行きしぶりが始まったのに、区の公的な受け皿は小4からしか使えなかった、ということが起きます。
確かめられる事実
  • 小学生の不登校は43人に1人。入学時に問題がなくても、小4〜5で増えます。
  • 受け皿を使える学年、校内の別室の有無、費用の助成は、区によって違います。

→ 第5章「セーフティを知る」

第2部|条件を決める|04

条件どうしは、ぶつかる

6つの問いの答えを全部満たす学区は、まず見つかりません。何を優先するかに正解はなく、家庭によって順番が違います。

6つの問いを見ていくと、条件がいくつも出てきます。ところが、条件どうしはよくぶつかります。

受験の環境 ⇄ 通勤時間塾や受験の情報が身近な区は都心寄りに多く、通勤は短くなりやすい一方、選べる住まいの幅は狭くなります。
学童の入りやすさ ⇄ 学校の規模子育て世帯が集まるエリアは支援が厚い反面、学校が大規模になり、学童も混みやすくなります。
通学の近さ ⇄ 学校を選べる制度隣の学区を選べる区でも、選んだ学校は家から遠くなります。抽選に外れることもあります。
今の暮らしやすさ ⇄ もしもの受け皿受け皿の厚さは、学区の評判とは別の軸で決まっています。両方そろう区は多くありません。

優先の置き方は、家庭によってさまざまです。たとえば、次のような考え方があります。

  • 教育の環境を最優先にして、通勤や広さは譲る。
  • 共働きを続けることを軸に、預け先と通勤時間から決める。
  • 通学の安全と近さを重視して、学校は指定校のままでよいとする。
  • 実家の近くなど、頼れる人との距離を先に決め、学区はその中で考える。
  • 合わなかったときの選択肢が多い区を選び、あとは住み心地で決める。

どれが良い、ということはありません。学区は、通勤時間、家の広さ、実家との距離などと並ぶ、住まい選びの条件のひとつです。

大事なのは、何を優先して何を譲ったのかを、自分たちで分かっていることです。

第2部|もしもに備える|05

セーフティを知る

学区を選ぶとき、多くの方が「入る前」のことだけを考えます。でも本当に差が出るのは、合わなかった「後」です。

まず、3つの数字

43人に1人小学生の不登校の割合。東京の公立小では45人に1人。10年で5倍に
0.9% → 3.7%小1から小6での不登校の割合。小4〜5で急に増える
6〜8倍「いじめ・先生との関係」を理由に挙げる割合は、学校の把握(1.8%)より本人・保護者の実感の方が多い

入学時に問題がなくても、学年が上がるにつれて起こり得ます。そして学校の見立てと家庭の実感は、一致しません。

受験率の高い区でも、不登校は起きています。中学生の不登校率が東京都の平均を上回っている区もあります。「良い学区だから安心」とは言えません。

受け皿には、こんな種類があります

  • 校内の別室。教室に入れないときの居場所です。無料で、出席になります。
  • 区の教育支援センター。学校の外にある公的な教室です。無料で、出席扱いになります。
  • フリースクール。民間の施設で費用がかかりますが、東京都と一部の区に助成があります。
  • オンライン教材。条件を満たせば出席扱いになります。
  • 転校。区が認めた理由があれば、転居せずに学校を変えられます。

→ 資料E「受け皿の種類と費用」

区によって違うのは、この3つです

何年生から使えるか小1から公的な受け皿を使える区と、小3や小4からしか使えない区があります。
校内に別室があるか小学校の設置率は約半分です。全校に置いている区と、中学校にしかない区があります。
費用の助成があるか東京都の助成(月2万円)に、区が上乗せしているのは7区だけです。

「学区の評判」と「受け皿の厚さ」は、まったく別の軸で決まっています。

→ 資料F「23区の受け皿一覧(小学生向け)」

親の働き方にも影響します子の看護休暇は小3まで取れるようになりましたが、不登校は対象に含まれません。不登校になったお子さんの親の約2割が退職し、半数が収入減を経験したという調査があります。在宅勤務ができるか、祖父母が近くにいるか。住まい選びに織り込んでおく価値があります。
転校が効くとき、効かないとき原因が特定の友人や先生、いじめなど「学校の環境」にあるなら、転校は有効です。学習の遅れや、集団生活そのものが苦手といった「本人側」の理由なら、転校しても同じことが起きやすい。本人が納得していない転校は、長引く原因になります。

確かめておきたい5つのこと

  1. 学区の小学校に、校内の別室があるか
  2. 区の教育支援センターは何年生から使えて、小学生が一人で通える距離か
  3. 区にフリースクールの助成があるか、通える範囲に施設があるか
  4. 区の指定校変更の理由に「いじめ・不登校」が書かれているか
  5. 発達や就学の相談は入学前年の春に始まる。動く時期と、親の働き方の余白
第2部|もしもに備える|06

学区は動く

住まいを決めたときの学区が、入学時もそのままとは限りません。

番地で割れます

通学区域は番地で決まります。同じ町内、同じ丁目でも、番地によって通う学校が分かれます。道路の東か西か、同じ番地の中の特定の棟だけ、という分かれ方もあります。

変更と制限が相次いでいます

  • 湾岸部では、開校したばかりの学校が満員になり、通学区域を引き直した区があります。
  • 大規模な住宅開発があった地域では、仮設校舎や第二校舎の計画が進んでいます。
  • 指定校変更の受け入れを止めた学校が、1つの区で6〜8校にのぼる年があります。
  • 一方で、児童数が減って学校の統合が続いている区もあります。

→ 資料G「通学区域の変更・統廃合の予定」

選べる区でも、締切は入居より早い

隣の学区の学校を選べる区は8区、距離の条件付きで選べる区は2区、特認校がある区は1区です。ただし申込の締切は10月末〜11月上旬が多く、7月に締め切る区もあります。

引っ越しと住民票の異動が間に合わなければ、選べません。兄弟がいても優先されない区があります。

→ 資料B「23区 小学校の就学制度 早見表」

第2部|確かめる|07

物件が出たら、確認する10項目

気になる物件が出たら、学区まわりはこの10項目を事実で確かめられます。

  1. 住所を番地まで、区の通学区域一覧で照合する
  2. その区の制度が「住所で決まる」「隣の学区を選べる」「特認校」「距離付きで選べる」のどれかを調べる
  3. 希望する学校が、抽選や受入制限の対象になっていないか、過去2〜3年分を見る
  4. 入学までに、通学区域の変更・統廃合・改築の予定がないかを確認する
  5. 通学路を、実際に歩いてみる
  6. 学童の定員と待機の状況を確認する
  7. 選択制の申込締切に、入居と住民票の異動が間に合うかを確認する
  8. 兄弟姉妹の在学が、優先や指定校変更の理由になる区かを確認する
  9. 学校公開日や説明会(9〜10月)で、児童数と教室の様子を見る
  10. 合わなかったときの受け皿(別室・支援センターの対象学年・助成)を確認する

確かめ方のコツ

  • 学区の確認は、区の教育委員会の「通学区域一覧」がいちばん確実です。販売図面や不動産サイトの学区表示は、参考情報です。
  • 住所を入力して学区を調べられる公式ツールがあるのは、23区では1区だけです。地図で確認できる区が3区、ほかはPDFや表で番地を照合します。
  • 民間の学区マップは2023年度のデータが多く、最近の変更が反映されていないことがあります。
  • 「一部」と書かれた番地は、区の担当課に電話で確認するのが早くて確実です。
第2部|確かめる|08

よくある疑問

迷いやすい5つの質問に、事実で答えます。

よく名前を聞く学区には手が届きません。二番手はどこですか?

ひとつの学区にこだわらず、6つの問いに照らして条件の近い学区を探す方法があります。隣の学区を選べる区なら、隣に住んで希望の学校を選ぶ道もあります。

学校の雰囲気は、どう見極めればいいですか?

口コミでは判断できません。見られるのは、児童数の推移、教室の状況、学校公開日の様子、そして区の受け皿の厚さです。「良い学校かどうか」より、「うちの子が合わなかったときに動けるか」で見ることをおすすめします。

道路一本で学区が違う物件です。どう確かめますか?

区の通学区域一覧で、番地まで照合してください。迷ったら区の担当課に電話するのが確実です。購入後に「違う学校だった」と分かっても、変更は簡単には認められません。

学区の外の学校に通わせる方法はありますか?

合法的な方法は2つだけです。隣の学区を選べる区の選択制を使うか、転居予定・兄姉の在学・預け先・いじめなど、区が定めた理由で指定校変更を申請するかです。住民票だけを移す方法は法律違反で、区は現地調査をします。入学後でも転校になります。

転勤で東京に来ます。土地勘がなく、学区から探せません。

学区から入らなくても探せます。通勤時間や預け先など、動かしにくい条件を先に置くと、区がいくつかに絞れます。そのうえで6つの問いを順に見ていくと、確かめるべき事実が分かります。

資料編

数字と一覧

本文に出てきた数字の元データと、区ごとの一覧です。A〜Hは第2部、I〜Kは第1部の元データです。必要なところだけ開いてください。学校名は、事実の例としてここにだけ載せています。

A区別の私立・国立中学進学率

公立小学校の卒業生のうち、私立・国立などの中学へ進んだ割合です。高い低いは優劣ではなく、「周りがどれくらい受験するか」の目安です。

区市私立中私立+国立都立・区立一貫校も含む都外の中学も含む
文京区48.5%50.1%52.9%57.8%
千代田区44.1%44.7%59.1%63.6%
港区41.9%42.8%43.6%50.7%
目黒区41.8%42.4%44.1%48.1%
中央区39.6%40.4%42.0%49.6%
渋谷区36.3%37.4%38.6%41.0%
新宿区36.0%37.3%39.2%41.8%
世田谷区35.1%35.8%37.3%39.5%
杉並区32.0%33.1%35.3%37.0%
武蔵野市31.7%32.0%35.5%36.9%
23区 合計25.0%25.6%27.3%30.4%
東京都 全体19.9%20.3%22.1%24.8%

東京都教育委員会「令和7年度公立学校統計調査報告書 進路状況調査編」第1表(2025年3月卒)から算出。千代田区の一貫校には区立の中等教育学校14.0%を含みます。低い側は葛飾区12.0%、足立区11.8%、江戸川区10.6%。学校別の数値は公表されていません。

B23区 小学校の就学制度 早見表

小学校を住所以外で選べるかどうかと、2027年4月入学の申込日程です。

制度区
隣の学区の学校を選べる港・墨田・品川・豊島・荒川・板橋・足立・葛飾
距離の条件付きで選べる江東(徒歩30分・約2km)、江戸川(約1.2km)
特認校を区内全域から申し込める中央(5校)
住所で決まる千代田・新宿・文京・台東・目黒・大田・世田谷・渋谷・中野・杉並・北・練馬
区小学校中学校備考(2027年4月入学の日程など)
千代田住所で決まる自由に選べる中学は区内2校から
中央住所で決まる+特認校5校自由に選べる特認校の申請10/1〜15、11月上旬結果
港隣の学区を選べる自由に選べる全員が希望票を提出。10月中旬配布→11月上旬締切→12月上旬抽選
新宿住所で決まる(2018年に選択制廃止)自由に選べる中学の受付9/16〜10/16
文京住所で決まる自由に選べる中学は12月上旬抽選
台東住所で決まる自由に選べる中学は10/16締切
墨田隣の学区を選べる(2017年に全域から縮小)自由に選べる11/4締切、11/20抽選
江東徒歩30分・約2km圏で選べる(自転車不可)自由に選べる11月上旬締切、12月上旬抽選
品川隣の学区を選べる(2020年に全域から縮小)自由に選べる10/1〜31申請、11/27〜12/2抽選
目黒住所で決まる(隣接希望は2019年から休止)隣の学区を選べる中学は9/11〜10/2申請、11/5抽選
大田住所で決まる住所で決まる指定校変更は12/3〜31申請、2月抽選
世田谷住所で決まる住所で決まる「自由に選ぶことはできません」と明記。2027年度は8校が受入制限
渋谷住所で決まる(2022年に選択制廃止)自由に選べる廃止直前は抽選113名中当選3名
中野住所で決まる住所で決まる
杉並住所で決まる(2016年に選択制廃止)住所で決まる「特色ある教育活動」を理由に隣接校へ申立可。各校10人まで
豊島隣の学区を選べる隣の学区を選べる9/30締切、11/26抽選。受入枠のない学校が4校
北住所で決まる住所で決まる
荒川隣の学区を選べる(制限校が1校)自由に選べる11月中旬提出、12月下旬抽選。兄姉の優先なし
板橋隣の学区を選べる自由に選べる9/28消印、10/16抽選
練馬住所で決まる自由に選べる2027年4月から一部の通学区域を変更
足立隣の学区を選べる自由に選べる10/21締切、12/10〜17抽選。受入停止校あり、兄姉の優先なし
葛飾住所で決まる+隣接校の希望可住所で決まる+区域外の希望可10月末申請、抽選は優先度順
江戸川直線1.2km圏で選べる自由に選べる小学校は7/17締切・9/4結果(他区より早い)

全23区の教育委員会公式ページで確認(2026年9月時点)。抽選は受入枠を超えた学校だけで、対象は学区外の希望者です。多摩地域は概ね住所で決まり、町田(隣接)・西東京(自由)・日野(ブロック)が例外です。

C預け先を理由に学校を変えられる区

共働きなどで放課後の預け先が学区の外にあるとき、その近くの学校に指定校を変更できるかどうかです。

区祖父母・親族の家の学区の学校学童クラブがある学区の学校
港認める(親族宅・勤務先、全学年)明記なし
中央明記なし認める
江東基準にない基準にない
品川認める(親族に限る)明記なし
世田谷認める(新入学時のみ)保育施設等に含まれると読める
杉並認める(小1〜3)「学童が近い」だけでは不可と明記
練馬親権者の不在などに限る認める
大田認める(週3回以上、2親等以内)認める(週3回以上、利便性が明らかな場合)
江戸川認める明記なし
足立認める明記なし
墨田認める(小3まで)認める(小3まで)
北認める(週3日3時間以上の就労など)時間の要件あり
台東認める(実家)認める
豊島認める(親戚宅での一時保護)明記なし
板橋明記なし認める(保育施設等)
葛飾認める認める
目黒認める(小3まで)認める(小3まで)
渋谷基準にない基準にない
新宿認める(3親等内、隣の学区まで)認める
千代田区外からの就学で祖父母宅を明記明記なし
文京・荒川基準が非公開基準が非公開

各区の指定校変更の審査基準(2026年9月時点)。受入先の学校の状況によっては認められないことがあります。

D学校の規模と教室の状況

同じ23区の中でも、学校の規模と教室の余裕には大きな幅があります。事実の例として学校名を挙げています。

状況例(区・学校・児童数)
児童1,000人を超える港区 港南小 1,129人/中央区 晴海西小 1,122人(1年生だけで9学級)/目黒区 東山小 1,062人/文京区 窪町小 1,001人
各学年1学級渋谷区 常磐松小 144人/港区 青山小 155人/千代田区 昌平小 229人
急に増えている港区 白金小 587人→746人(2019→2023年)/港区 南山小 10年で約2倍/新宿区 愛日小 220人→488人(2009→2025年)
減っている千代田区 番町小 438人→364人(2023→2026年)。千代田区の区立小全体は2022年がピーク
教室が足りない文京区 誠之小(24学級設計の新校舎に29学級、副校長2名体制)/文京区 窪町小(隣の再開発ビルを借りて2028年度から使用予定)/港区 港南小(仮設校舎を2032年まで延長する案)/中央区 晴海西小(2027〜28年度は仮設校舎、その後に第二校舎)
改築・仮校舎の予定武蔵野市 井之頭小(2026〜28年度、仮設校舎)/文京区 千駄木小(改築計画中)/世田谷区 深沢小・砧小(改築中)/千代田区 番町小(建替え計画中)/渋谷区 神南小(工事 2026年9月〜2029年7月)

各区教育委員会の公表資料(2025〜26年)から。児童数は年度で変わります。学校の優劣を示すものではありません。

E受け皿の種類と費用

合わなかったときに使える受け皿を、出席扱いになるか・費用・注意点で並べました。

受け皿出席扱い費用の目安ひとこと
校内の別室(校内教育支援センター)出席無料小学校の設置率は49%。利用者の2割が教室に戻り、5割が改善。全校設置を明記しているのは千代田・台東・品川・荒川・練馬
区の教育支援センター出席扱い無料全区にあるが、対象学年の下限と拠点数が区で違う。利用は不登校の小学生の8%
フリースクール校長判断月額の中央値3.8万円東京都の助成が月2万円(所得制限なし)。区の上乗せがあるのは港・品川・荒川・足立・板橋(各2万)、北・葛飾(各1万)。約9割の家庭が費用を負担に感じている
オンライン教材条件付き月0.9〜2.8万円都の助成対象外。学校外の施設に通えない場合が前提
学びの多様化学校(不登校特例校)出席公立は無償都内14校で全国最多だが、小学生が入れる公立は八王子市(市内のみ、小4〜)と大田区(小4〜6)だけ
転校(指定校変更)出席無料「いじめ・不登校」を理由に明記している区: 杉並・港・練馬・北と八王子市。明記のない区は個別判断。いじめ理由の指定校変更は全国で年383人と少なく、最後の手段

文部科学省(2025年)、東京都フリースクール等利用者支援事業、各区教育委員会。2026年9月時点。

F23区の受け皿一覧(小学生向け)

見るべきは「対象学年の下限」と「校内の別室があるか」です。

区校外の教育支援センター校内の別室フリースクール上乗せ
千代田1拠点(小中)全小中に設置—
中央1拠点小学校全校化を進行中(2025〜27年)—
港1拠点段階的に配置月2万円
新宿1拠点+出張型5未確認—
文京1拠点(小3以上)モデル校 小15校/20校—
台東1拠点全校—
墨田1拠点(小3以上・欠席30日以上)中学のみ—
江東4拠点(学年下限なし)全校配置の方針—
品川4拠点(小3または小5以上)全校月2万円
目黒3拠点未確認—
大田5拠点(小4以上)2028年度に全校目標—(小学生向け特例校あり)
世田谷4拠点未確認—
渋谷1拠点未確認—
中野3拠点(小1〜)中学全校+小5校—
杉並4拠点(1つは小学生専用)あり—
豊島1拠点(小4以上)小学校は2026年2学期から順次—
北1拠点+児童館3小3校・中学全校月1万円
荒川1拠点(小1〜)全校+スタッフ週3日月2万円
板橋2拠点(小4以上)中学全校+小3校月2万円
練馬小学生専用2拠点(全学年)全校—
足立3拠点(1つは小学生専用)25か所月2万円
葛飾1拠点(小1〜)中学全校+小4校月1万円
江戸川6拠点あり—

各区教育委員会の公表資料と東京都「多様な学びの場・居場所ナビ」から(2026年9月時点)。「未確認」は公式で確認できなかった意味で、制度がない意味ではありません。小1・2から使えるのは荒川・中野・練馬・江東・葛飾・品川(オンライン)など。文京・墨田は小3から、大田・板橋・豊島は小4からです。

G通学区域の変更・統廃合の予定

2024年以降に決まった、通学区域の変更・受入制限・学校の統合です。

区市変更・予定時期
港区芝浦4丁目全体を芝浜小から芝浦小へ。2050年に小学生が18%増える見込みで、学校施設の整備方針を2027年3月に策定予定2025年度入学〜
中央区月島地域の通学区域を変更。晴海西小は仮設校舎(2027〜28年度)の後、第二校舎を晴海4丁目に開設予定2025年4月〜
品川区東品川4丁目11〜13番を城南小から城南第二小へ2026年4月
新宿区愛日・早稲田・四谷・四谷第六・落合第一・西戸山の6校が指定校変更の受入困難2027年度入学
世田谷区桜・桜丘・中丸・松丘・二子玉川・明正・芦花・山野の8校が受入制限2027年度入学
練馬区練馬小・高松小の環八南側を春日小へ2027年4月〜
葛飾区柴又小と東柴又小を統合2027年度
江戸川区江戸川小と下鎌田東小(2028年4月)、小松川小と平井東小(2030年4月)など統合が続く2025〜2031年
渋谷区猿楽小・千駄谷小・笹塚小を中学校の新校舎で小中一貫校に2026年〜
武蔵野市第一小・第五小・井之頭小は通学距離を理由とした指定校変更を認めない。井之頭小は改築中2019年〜

各区市の教育委員会、東京都教育委員会「設置・廃止等一覧」(2026年4月更新)から。

H区の子育て支援の違い・相談先

給食費の無償化と18歳までの医療費助成は、2025年度に23区すべてで揃いました。差がつくのは、それ以外です。

学童の待機児童(2025年5月)ゼロの区: 千代田・品川・世田谷・渋谷・中野・豊島・北・荒川・板橋・江戸川。武蔵野市もゼロ。多い区: 杉並481人、中央275人、目黒246人、葛飾227人、足立179人、大田155人、文京68人。
独自の給付港区は出産費用の助成が最大31万円、渋谷区は出産祝金10万円、江戸川区は乳児養育手当が月1.3万円×12か月、足立区は小1・中1の入学準備金10万円(2026年4月〜)。第2子以降の保育料無償は品川・港・江東・北など。
発達の相談と支援特別支援教室(巡回指導)は都内の小学生の4.7%が利用。就学相談は申込が春〜夏、結果は1月前後で、練馬区は7月末、世田谷区・港区は10月末が締切。放課後等デイの自己負担を区独自に軽くしているのは千代田・中央・新宿・荒川・墨田の5区。
相談窓口東京都教育相談センター いじめ相談ホットライン 0120-53-8288(24時間)。不登校の相談 03-3360-4192(平日9〜17時)。親の会は「登校拒否・不登校を考える東京の会」の下に都内46団体があります。

出典: 東京都福祉局「学童クラブの待機児童」「障害児通所支援事業所の利用状況等調査」、各区公式、東京都教育委員会(2025〜26年)。

Iルート別の比較表

第1部で触れた7つのルートを、開始時期・費用・親の負担・主なリスクで並べたものです。費用は幼稚園から高校までの目安で、家庭によって大きく変わります。

ルート始める時期決断の期限幼〜高の総費用(目安)親の負担主なリスク
小学校受験(私立・国立小)年少の11月〜年中年中の秋(出願9月・考査11月)約2,200〜2,400万円幼児期に集中して大きい倍率5〜10倍。小学校で進路が固定。都の私立小への助成はない
中学受験 → 私立の中高一貫3年生の2月3年生の冬の入塾、6年生の秋の志望校確定約1,150〜1,250万円4〜6年生の3年間で最大塾代340〜400万円。撤退・転塾が4割。親の精神的な負担
都立・区立の中高一貫4〜5年生5年生の春の塾、1月上旬の出願約780〜890万円中〜大(作文・報告書)倍率3〜4倍で1校だけ。不合格なら地元の中学へ
公立中 → 高校受験中1(内申が始まる)中3の12月約740〜900万円中学3年間で中くらい内申の学校間差。部活の縮小。都立の定員割れ増
インター・英語ルート2〜3歳(プリスクール)小学校入学時3,000〜7,000万円(学費のみ)費用の負担が最大就学義務の扱い、日本語力、途中でやめにくい
公立小中 → 都立高特になし中3の12月614〜665万円+塾代(700〜800万円)小さい内申、学区差、不登校の受け皿
通信制・オルタナティブ随時随時公立並み〜プラス年84〜99万円中(家庭の関与が大きい)一条校でない学校は、籍や出席の扱いが学校ごとに違う

各塾・学校の2026年資料、文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」、東京都「私立中学校・高等学校の学費状況(令和8年度)」から作成。

J教育費の一覧

学校の費用と、塾・習い事を含めた年間の目安です。「私立小 → 公立中高」など、上の表にないルートもこの年額から組み立てられます。

段階公立(年額)私立(年額)
幼稚園18.5万円34.7万円
小学校36.7万円174.2万円
中学校54.2万円156.0万円
高校59.7万円117.9万円

文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」(2026年1月訂正版)。学校教育費・給食費・学校外活動費(塾・習い事)の合計。塾などの学校外の学習費は、中学だけ公立(27.2万円)が私立(23.7万円)を上回ります。

区分目安
中学受験塾 4〜6年生の3年間大手4社で約233万〜287万円。6年生の1年で126〜138万円
高校受験塾 中1〜中3平均約103万円(中3で46万円)。都内の上位塾は150〜200万円
大学受験の予備校 高392〜100万円
私立中 初年度の納付金平均104.8万円(令和8年度、最高211.8万円・最低66.8万円)
私立高 初年度の納付金平均100.8万円
私立の中高一貫 6年間納付金のみ約510万円。都の助成(私立中 年12万円、私立高 年50.1万円まで)を引くと実質約320万円。塾・制服・部活込みでは約820万円
都の助成私立中の授業料助成 年12万円(所得制限なし、2026年度)。私立高は国45.72万円+都4.38万円=50.1万円まで(所得制限なし)
K区別の塾・学校の所在

2026年9月に各塾・各校の公式サイトから数えたものです。校舎数は1〜2の誤差があります。「ある・ない」は優劣ではなく、通いやすさの目安です。

塾(主な対象)23区の校舎数分布の特徴
SAPIX(難関中学受験)20港3・世田谷3・中央2。足立・葛飾・江戸川・板橋・大田・台東・墨田・荒川には校舎なし
四谷大塚 直営(中学受験)16新宿3・世田谷3・中央2。城東・城北はほぼなし
グノーブル(難関中学受験)8前後世田谷2、千代田・中央・渋谷・豊島・練馬
日能研(中学受験)35世田谷5・港4・品川3。足立2・江戸川0
早稲田アカデミー(中学・高校受験)53世田谷6・杉並5・練馬5・港4・大田4。城東・城北にも広い
栄光ゼミナール(中学・高校受験)77世田谷9・杉並6・大田5・板橋5。城東に厚い
ena(都立中・都立高)120江東10・杉並10・練馬10・大田8・世田谷8・足立7・北7。23区全域に面的
市進学院(中学・高校受験)19江戸川4・足立3。城東に厚い

大手中学受験塾5社がそろう駅は吉祥寺・成城学園前・お茶の水。4社は自由が丘・豊洲・町田・渋谷・練馬・巣鴨・勝どき晴海月島。私立中への進学率が低い区ほど、都立中対策塾の存在感が大きくなります。

学校の種類所在の分布
私立小(協会加盟55校)世田谷8・千代田3・渋谷3・武蔵野3・国立3。中央・台東・墨田・江東・荒川・足立・葛飾は0
私立中(185校)世田谷19・文京14・千代田12・港12・北10・豊島9・杉並8。城東4区と足立・荒川の合計は14校
国立の附属小文京区大塚に3校が集中。ほかに世田谷・小金井・大泉。住所で出願できる範囲が決まる(例: 23区内のみ、世田谷・目黒・大田の指定町名のみ)
都立・区立の中高一貫 11校千代田・文京・台東・墨田・目黒・中野・練馬・武蔵野・三鷹・立川・八王子。品川・大田・葛飾・江戸川・足立には所在校なし。通学区域はなく、都内在住なら出願できる。2026年度の一般枠は各校152名、合計1,502名
都立高2003年度から学区なし。進学指導重点校7校は千代田・杉並・新宿・渋谷・国立・立川・八王子に所在。都内の中学校からの通学時間は平均70分(試算)
インター港33・世田谷14・渋谷12(プリスクール含む)。城東(江東・江戸川)にはインド系が集まる

通塾率(令和7年度 全国学力・学習状況調査): 東京都は小学6年生57.9%、中学3年生68.2%(全国は43.9%・56.9%)。塾選びの決め手1位は「自宅からの距離・交通の便」59.5%。

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